
今日はToolの「Fear Inoculum」について話をしようか。この曲は2019年にリリースされたアルバムのタイトル曲で、13年ぶりの新作だったんだ。

私もこの曲を聴いたときは衝撃を受けたわ。10分を超える長尺の曲なのに、一瞬で時間が過ぎていくような感覚だったわ。

その通りだね。この曲には時間の概念を超越するような力がある。まるで瞑想のようにね。実は、この曲のタイトルにも深い意味があるんだ。

「Fear Inoculum」…恐怖の予防接種みたいな意味かしら?

鋭いね。その解釈は正しいよ。この曲は恐怖に対する免疫を獲得するプロセスを描いているんだ。人生における恐怖や不安と向き合い、それを乗り越えていく過程を音楽で表現しているんだよ。

なるほど。だからこそ、聴いていると心が浄化されるような感覚になるのかもしれないわね。

ボーカルのMaynard James Keenanは、この曲について興味深いコメントをしているんだ。彼は最近のインタビューで、次のアルバムについて言及していてね

え、そうなの?次のアルバムの話が出ているの?

ああ、Consequence.netの記事によると、Keenanはこう言っているんだ。「我々はもう14年も引き延ばすことはできない」とね。


14年も?前回のアルバムまでそんなに時間がかかったの?

そうなんだ。「10,000 Days」から「Fear Inoculum」までは13年の歳月が流れていたんだよ。Keenanは続けて「Toolはもっと複雑な獣で、たくさんのエゴや私たちの人生における他の多くのことが絡み合っている」と語っているんだ。

まるで哲学的な発言ね。音楽制作と人生の複雑さを重ね合わせているみたい。

その通り。Toolの音楽は常に哲学的な要素を含んでいるんだ。「Fear Inoculum」もその例外ではない。この曲は単なる音楽作品ではなく、人間の意識や存在に対する深い洞察を含んでいるんだよ。

それって、どういう意味かしら?

例えば、歌詞の中に「Exhale, expel / Recast my tale / Weave my allegorical elegy」という一節があるんだ。これは自己変容のプロセスを表現しているんだよ。古い自分を手放し、新しい物語を紡ぎ出す。まさに恐怖に対する免疫を獲得する過程そのものだね。

なるほど。でも、なぜ「恐怖」なの?私たちの人生において、恐怖はそんなに重要なものなの?

恐怖は人間の最も根源的な感情の一つだからだよ。恐怖は私たちを守るためのメカニズムでもあるけど、同時に成長を妨げる障壁にもなりうる。Toolはこの曲を通じて、恐怖と向き合い、それを乗り越えることの重要性を説いているんだ。

そう考えると、この曲を聴くことそのものが一種の瞑想や自己探求の旅になりそうね。

実は、この曲の構造自体がその旅を表現しているんだよ。ゆっくりと始まり、徐々に強度を増していき、最後にはカタルシスに達する。これは瞑想や自己探求のプロセスそのものだと言えるね。

音楽を通じてそこまで深いメッセージを伝えられるなんて。でも、一般のリスナーにもそこまで伝わるのかしら?

それは個人によって異なるだろうね。でも、音楽には言葉以上の力がある。たとえ歌詞の意味を完全に理解できなくても、音楽そのものが聴く人の心に働きかけるんだ。

なるほど。でも、13年も待たせた後のアルバムだったわけでしょ?ファンの反応はどうだったの?

そうだね、ファンの反応は非常に興味深かったんだ。例えば、ある個人ブログでは次のように書かれているよ。
“I told everyone I didn’t want Tool to release a new album. But when I was invited to an early listening of Fear Inoculum, their first collection of music in 13 years, I accepted. I’m a hypocrite, I know. But a very happy hypocrite whose decades of Tool fandom could not stop me from going to Sony’s New York office to hear the album before everyone else, like I’m the chosen one.”(https://www.esquire.com/entertainment/music/a28860341/tool-new-album-fear-inoculum-review/)

なんて正直な感想なの!新しいアルバムを望んでいないと言いながら、実際には聴きたくてたまらなかったのね。

そうなんだ。この感想は多くのToolファンの心境を表しているんじゃないかな。長い沈黙の後の新作に対する期待と不安が入り混じった複雑な感情がよく表れているよね。

確かに。13年も待たされたら、期待も大きくなるけど、同時に失望するリスクも高くなりそう。

その通りだ。でも、「Fear Inoculum」はそんな期待に応えたんだ。同じブログの後半では、こう書かれているんだ。
“I left the mystical listening chamber and re-entered the streets of New York City. I felt a sense of ease. I loosened the anxious grip I had on my fading youth a tiny bit more. Finally experiencing that album felt like attending a high school reunion that exceeded every expectation.”

なんて素敵な表現なの。音楽が人生の一部となり、時間の流れさえも変えてしまうような感覚を味わったのね。

これこそがToolの音楽の真髄だと言えるかもしれない。単なる音楽作品を超えて、聴く人の人生に深く関わり、変化をもたらす力を持っているんだ。
②に続く
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