
でも、深遠な音楽を作り続けるのは大変そうね。バンドメンバーの関係性はどうなのかしら?

実は、先ほど紹介したKeenanのインタビューの中で、バンドの創作プロセスについても触れられているんだ。彼はこう言っているよ。
“As soon as we get past the arguments, we can get shit done! [Laughs] I think we could do it more efficiently. And I think everyone’s on the same page that we have to get through that, because we can’t drag this out another 14 years.”(https://consequence.net/2024/04/maynard-james-keenan-next-tool-album/)

意見の衝突があったみたいね。でも、それを乗り越えようとしている姿勢が感じられるわ。

創造的なプロセスには往々にして衝突がつきものだからね。むしろ、それを認識し、乗り越えようとしている姿勢こそが重要なんだ。

でも、「Fear Inoculum」自体はそういった衝突を経て生まれた作品なのかしら?

いい視点だね。実は、この曲の制作過程についても興味深い情報があるんだ。別の音楽ブログでは、こんな記述があったよ。
“If there’s one thing that the 86 minutes of Fear Inoculum provides, it is the sound of four people making long, complicated songs together. There are hardly any overdubs, production flourishes, or additional instrumentation, just Keenan’s delicate howl, bassist Justin Chancellor, guitarist Adam Jones, and one of the most lauded drummers in modern rock, Danny Carey.”(https://pitchfork.com/reviews/albums/tool-fear-inoculum/)

まあ、86分もの長さなの?そして、ほとんどオーバーダブもなく、4人で作り上げたというのは驚きね。

そうなんだ。この情報は「Fear Inoculum」の本質を理解する上で重要なんだよ。4人の音楽家が互いの音を聴き合い、反応し合いながら作り上げた音楽なんだ。これは単なる技術的な話ではなく、哲学的な意味合いも持っているんだ。

どういうことかしら?

音楽を通じたコミュニケーションと調和の探求とも言えるんだ。4人がそれぞれの個性を保ちながら、一つの音楽を作り上げる。これは人間社会のミニチュアモデルとも言えるんじゃないかな。

なるほど。音楽を通じて社会や人間関係のあり方を探求しているのね。

「Fear Inoculum」は単なる音楽作品ではなく、人間の存在や関係性についての深い洞察を含んでいるんだ。恐怖との向き合い方、自己変容のプロセス、他者との調和…これらのテーマが音楽を通じて表現されているんだよ。

でも、そんな深い内容の音楽を、一般のリスナーはどう受け止めているのかしら?

それもまた興味深い点だね。実は、この曲に対する一般リスナーの反応も様々なんだ。例えば、ある音楽ファンのブログではこんなコメントがあったよ。
“This song came out shortly after I finished therapy for PTSD from an insidiously abusive relationship and I was nearly in tears listening to it the first time. I had chills. It’s a perfect account of escaping an abuser/toxic person and becoming a stronger, better version of yourself. Tool’s music has always felt somewhat therapeutic for me, but this song hit me particularly hard.”(https://songmeanings.com/songs/view/3530822107859594138/)

なんて感動的な反応なの。この人にとって、「Fear Inoculum」は単なる音楽以上の意味を持っていたのね。

そうなんだ。これこそがToolの音楽の真髄だと言えるかもしれない。聴く人それぞれの人生経験や心の状態によって、全く異なる意味を持ち得るんだ。まさに、音楽を通じた自己探求や癒しのプロセスと言えるね。

そんな深い意味を持つ音楽を作り続けるのは、アーティストにとっても大きなプレッシャーになりそうね。

実は、Toolのギタリストのアダム・ジョーンズもそのことについて言及しているんだ。彼はこう言っているよ。
“Most of the people that you hear from on those things – like, ‘When’s your next record?’ – when you do finish it, they’re like, ‘OK, when’s your next one?’ You can’t make people happy. We have this very selfish approach to art. It’s our rules. When you start trying to make people happy, you’re losing yourself. You’re losing that burn inside you of why you do what you do.”(https://consequence.net/2024/04/maynard-james-keenan-next-tool-album/)

アーティストとしての信念を貫くことの重要性を語っているのね。

そうだね。これは音楽に限らず、あらゆる創造的な活動に通じる真理かもしれない。他人の期待に応えようとするあまり、自分の本質を見失ってしまうことへの警鐘とも言えるんだ。

でも、ファンの期待に応えないと、支持を失うリスクもありそうよね。

ここに創作者としてのジレンマがあるんだ。自分の芸術性を貫くことと、聴衆の期待に応えることのバランスをどう取るか。これは音楽に限らず、あらゆる芸術分野で直面する問題だと言えるね。
③に続く
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